不妊症原因と治療法
基礎体温計測、ホルモン検査、卵管通気検査、精液検査などで原因を調べ、同時に治療は排卵誘発、排卵日確認によるタイミング指導、人工授精などから選択いたします。
不妊症とは?
結婚されて特別に避妊をしていないにもかかわらず、2年以上経っても赤ちゃんができにくいご夫婦を不妊症と診断し、検査および治療の対象といたします。統計的には全カップルの10%の方々に不妊がみられます。とくに、一度も妊娠の経験を持たない方を「原発性不妊」、過去に妊娠があってその後不妊となった方を「続発性不妊」とお呼びします。
不妊症の原因にはどのようなものがあるのでしょう?
不妊は必ずしも女性ばかりに責任があるものではありません。実際には男性側に理由があったり、あるいは男性女性の双方に障害がある場合や、原因がはっきりしないものも少なくはないのです。 以下に女性側に限った不妊因子をまとめますが、この中でも1つの理由だけでなく複数の因子が重なって妊娠にいたらない方もいらっしゃいます。
- 排卵の障害
- 卵巣やその上位中枢に問題があり、排卵がおこらない。
- 卵管の障害
- 卵管がつまっているか、通過性が不良のため、受精がうまくいかない。
- 子宮の障害
- もともと子宮に奇形があったり、子宮筋腫の存在や子宮内膜の発育不全などにより受精卵が着床しない。
- 頸管の障害
- 子宮頸管(子宮口)が異常にせまい、頸管粘液の分泌不全がある、あるいは炎症があって精子が容易に子宮口を通過できない。
- 腟、外陰部の障害
- 腟が閉鎖していたり、炎症が強く夫婦生活が持てない。
一般に女性側の因子としては、卵管不妊の頻度が最も高いと言われています。
当院で行っている不妊症の検査と治療について
そろそろ赤ちゃんが欲しいとお思いになられたら、基礎体温測定などご自身でできる簡便な方法から始めていただくとよいでしょう。
検査法
A) 排卵因子について
- 基礎体温測定
- 毎朝起床時に専用の体温計(婦人体温計)で体温を計って、排卵の有無や排卵日を判定する基本的な手技です。
- ホルモン検査
- 血液中の女性ホルモン(卵胞ホルモン、黄体ホルモン)、下垂体ホルモン(卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン)、乳汁分泌ホルモン、抗ミュラー管ホルモン(AMH)や甲状腺ホルモンなどを測って内分泌環境をチェックします。
- 頸管粘液検査
- 子宮口からの特徴的なおりものの所見より、排卵の時期を判断します。
- 卵胞計測
- 超音波断層法(エコー検査)で卵巣内の卵胞の大きさを計測して、同様に排卵日を確認します。
B) 卵管因子について
- 通気検査(ルービンテスト)、通水検査
- 炭酸ガスや生理食塩水を子宮口から子宮および卵管内に注入して、卵管の通過性を精査します(卵管の検査は妊娠していないことが確実な頃、通常は生理があってつぎの排卵が起こる前に行います)。
C) 子宮因子について
- 超音波断層法
- エコー検査で子宮の大きさや形、さらには内腔のようすを観察します。
- 子宮内膜日付け診
- 排卵のあとの子宮内膜を少量採取し、着床に適した状態かを組織学的に診断します。
D) 頸管因子について
- フーナーテスト(性交後テスト)
- 排卵日に夫婦生活をお持ちになったあとご来院いただき、腟内や頸管内の精子の活動状況を調べます。
E) 感染症について
- クラミジアをはじめ各種感染症の存在の有無を検査します。
F) その他
- 精液検査
- ご主人の精液中の精子数、運動率、奇形率などを顕微鏡下でカウントします。
- 抗精子抗体検査
- 血液中に抗精子抗体をお持ちの方は、原因不明不妊症の15%前後に認められ、主として体外受精の適応と考えられます。
治療法
A) 排卵誘発法
排卵がはっきりしないか、排卵を認めない方には、クロミッドなどのお薬を使ったり、hMG-hCG療法(注射)を用いたりして排卵の誘発を行います。
B) hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)注射
排卵のあと基礎体温が十分に上がらない、高温相が短いといったような黄体機能不全を示される方には、hCGのお注射で黄体機能の賦活を図ります。
C) タイミング法
エコー検査や、頸管粘液で排卵日を推定し、夫婦生活を持っていただくタイミングを決定します。
D) 人工受精
推定排卵日にご主人の精子を子宮内へ送り込む方法(AIH:配偶者間人工授精)です。精子数が少ないか、運動率が低下している、頸管粘液との適合性がよくないなどが適応となります。
※なお、当院では、「体外受精胚移植」や「顕微授精」は行っておりません。
同治療の対象となる患者さまはご希望の(不妊症)専門施設へご紹介いたします。