子宮がん検診・予防ワクチン
子宮がん検診(頸がん・体がん)
細胞診、エコー診などを行います。決して苦しい検査ではありませんのでご安心ください。
院長は「臨床細胞診専門医」であり、当院は市の子宮がん検診指定施設です。
また、子宮頸がん予防ワクチンの接種も行っています。
子宮がんの種類と検査について
子宮がんには、子宮口に発生する頸がんと、子宮の内膜にできる体がん(内膜がん)があります。
頸がんは比較的若い世代に発生のピークがあり、とくに20歳から30歳代での発症が増えて問題視されています。初期には症状がまったく示されず、進行するにしたがって不正出血や血性帯下(血性のおりもの)が出現します。診断には、まず子宮口(子宮頸部)からブラシなどで細胞を採る細胞診が行われますが、そのほかにも、頸がんの発生にはヒトパピローマウイルス(HPV)の関与が強く示唆されることより、HPV検査(HPV-DNAテスト)も応用されるようになりました。
(HPVテストは、細胞診採取時に一緒に行える簡便な検査法で、HPVに感染しているかどうかを判定できます。)
一方の体がんは、頸がんよりも年齢が上の閉経期前後の女性に多くみられ、その発生にはホルモン異常が関連しているため、とくに妊娠・出産の経験をお持ちでない方、肥満、高血圧、糖尿病などを合併されている方は注意が必要です。以前わが国では、体がんは頸がんと比べ発現の比率は少ないものと言われていましたが、最近は増加の傾向にあります。初発症状としてはやはり不正出血が一般的で、診断のスクリーニングには、細いブラシを使った子宮内膜からの細胞採取(細胞診)が用いられます。ただ、子宮口が小さくてどうしても細胞の採取が難しい方には、エコー診で子宮内膜の厚さをチェックする方法が取られます。
子宮頸がんとヒトパピローマウイルス(HPV)
子宮頸がんの発生には、ヒトパピローマウイルス(HPV)が関係していることはすでに述べました。
HPVとはごくありふれたウイルスの一種で、種類は100以上あります。このうち頸がんの原因となるものは15種ほどとされ、発がん性HPVと呼ばれています。性行為で感染し、数年から十数年かけて子宮頸部(子宮口)の細胞をがん化させると言われますが、HPVに感染した女性のすべてが頸がんになるわけではありません。このウイルスに感染しても、90%以上の方ではなんの症状も示されずに1~2年のうちにウイルスは自然に消えてしまいます(一過性感染)。しかしながら、HPVが消失せずに長期間存在(持続感染)した場合、子宮頸がんや前がん状態に進む確率が少し高くなると考えられます。また、HPVはいったん排除されても、何度でも感染を繰り返す事実も指摘されています。すなわちHPVに感染しても実際に頸がんになる比率は低いのですが、頸がんの発症には必ず、HPVがかかわっています。そこで、頸がんの検診は、従来からの細胞診検査に加えて、できればHPVテストもお受けになるようおすすめいたします。現在、本テストは細胞診で特定の結果が得られた場合にのみ保険の適応となります。
HPVテストが陽性とは
もともと性活動のある女性のほぼ80%は、一生のうち一度はHPVウイルスに感染すると言われます。それほどふつうにみられるウイルスで、どなたでも感染する可能性があり、特別な感染症というわけではありません。
通常、感染の診断にはHPVテストが用いられます。そして、この検査結果が陽性と出た場合は、HPVに感染していると解釈されます。ただしこれは、現在頸がんがあるとか、いずれ頸がんになるということではありません(ウイルスが消失すれば、当然テストも陰性となります)。ただ、陰性の方と比べると、頸がんや前がん状態になる心配が、わずかながら高いかもしれないと考えられます。したがって、がんにならないよう、また早期発見につながるよう、引き続き検診を定期的にお受けいただく必要があります。
子宮がんの精密検査について
子宮頸がんでは、細胞診あるいはHPV併用テストで異常が認められた場合に精密検査が必要になります。具体的には、子宮口(子宮頸部)をコルポスコープと呼ばれる拡大鏡で観察して、肉眼では確認できなかった粘膜のただれや、白斑、出血班などが見られる部位の組織を採り、病理(顕微鏡)診断を加えます。その結果により、あとのフォローの方式が決まります。検査は外来で行い、麻酔は使用しませんからそれほど時間もかからず、取り分けつらい処置ではありません。
子宮体がん(内膜がん)の精密検査も、細胞診での異常やエコーの画像が問題になった時に確定診断として病理検査を実施します。こちらは子宮の中の組織を採取しますので、痛みのないように麻酔下に検査を行います。この方法で得られた内膜組織の病理所見で正確な判定がくだされます。
いま、私たちは子宮がんを見つける検診と同時に、その前段階にあたる変化(前がん病変)を捕えて、がんにならないようご指導する努力も続けています。
子宮頸がん検診はいつから受ければよいのでしょう?
子宮頸がん検診の一応の目安については、アメリカ癌協会(ACS)のガイドラインがあり、当院では、このガイドラインを参考にした方法での検診を行っています。
- 検診を始める年齢
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- 性交経験から3年後か、20歳以降から
- 検診の間隔
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- 通常の細胞診検診は毎年
- 30歳以上の方で、検診結果が続けて3回以上正常であれば2~3年ごと
(細胞診とHPVテストの2つがともに正常であれば3年ごとでもよい)
- 検診の終了時期
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- 70歳以上の方で、検診結果が続けて3回以上正常である場合
- 70歳までの10年間に、細胞診での異常が全くなかった場合
- ご年齢にかかわらず、良性疾患(病理学的に確認)で子宮を摘出している場合
わが国の行政検診は、20歳以上の女性を対象に、2年に1度の間隔で施行する市町村が多いようですが、入間市ではお申し込みいただくと、毎年検診が受けられます。
詳しくは、つぎの「市の子宮がん検診について」をご確認ください。
市の子宮がん検診について
入間市の子宮がん検診は、例年6月から翌年の2月までの間に行われます。対象は市内在住の20歳以上の女性で、費用は公費負担(無料)です。
お申し込みは4月1日より受け付けています。
お申し込み方法は…
- (1) 健康福祉センター(入間市大字上藤沢730番地1)の窓口で直接申し込む
- (2) 成人健診予約専用電話(04-2966-5520) で申し込む
(受付時間:祝日を除く月~金曜日 午前8時30分~午後5時) - (3) 個別健診申し込みはがき(健康カレンダー裏表紙)を利用する。
などの方法があります。お申込み後、約1週間で受診通知(検診診断票)が皆さまのお手元に送られてきます。
当院は市の子宮がん検診指定医療機関です。市から郵送された検診診断票をお持ちいただいてお越しください。
診察は個別検診で、内診および子宮頸部細胞診(頸がん検診)を行いますが、医師の判断により必要と思われる方には、子宮体部細胞診(体がん検診)が付け加えられます。
入間市子宮がん検診情報
当院の子宮がん検診受診者数
当院の子宮がん検診を受診された患者さまの推移です。
子宮頸がん予防ワクチンとは?
子宮頸がんを引き起こす可能性がある発がん性HPVの感染を予防する3つタイプのワクチン(サーバリックス/ガーダシル/シルガード9)が現在わが国で使用されています。これらのワクチンは、15種類ほどとされる発がん性HPVのうちリスクの高いウイルスの感染を抑え、結果として子宮頸がんの発症を相当防ぐ効果が期待できます。そこで現在、子宮頸がんはワクチン接種によって予防可能な唯一のがんと言っていいでしょう。
ただ、このワクチンはすべての発がん性HPVの感染を防げるものではありません。また、接種時にすでに感染している発がん性ウイルスを排除できるものでもありません。そのためワクチン接種後も、子宮頸がん検診は継続すべきことになります。
3種類の子宮頸がん予防ワクチン
子宮頸がん予防ワクチンには、サーバリックス(二価ワクチン)とガーダシル(四価ワクチン)、シルガード9(九価ワクチン)の3種類があります。いずれも子宮頸がん発症の引き金になるウイルスの感染を防ぐものですが、サーバリックスはHPV16と18型を、ガーダシルはそれに加え尖圭コンジローマ(外陰部にできるイボ)の原因とされるHPV6型、11型の感染も予防すると考えられています。これらはおのおの別途に開発されたワクチンですので、続けて同じワクチンを接種する必要があります。つまり、どちらかのワクチンを接種して、つぎに別のワクチンを打った場合の効果や安全性は確認されていません。サーバリックスは初回接種から2回目は1ヵ月後、3回目は6ヵ月後に、ガーダシルは2回目が2ヵ月後、3回目は6ヵ月後にと、ともに3回の筋肉注射が必要です。
このほか2020年厚労省が第三のワクチンとしてシルガード9の製造発売を承認しました。
このワクチンはHPVの16、18、31、33、45、52、58型に加え、尖圭コンジローマの原因となる6、11型の感染も防ぐため、九価ワクチンと呼ばれています。そして、2023年の春からこのワクチンも公費負担で無料接種ができるようになりました。9~15歳のお子さんには2回(最初の接種から2回目は6ヵ月後)の筋肉注射が、15歳を過ぎた方には3回(2回目は2ヵ月後、3回目は6ヵ月後)の注射が行われます。
どのワクチンも接種と関連すると思われる副反応に、注射部位の腫れ、痛み、発赤、しびれ、かゆみ、しこりなどのほか、疲労、発熱、筋肉痛、関節痛、頭痛、吐き気などがあり、これらは通常短時間から数日のうちに改善されます。まれに重い副反応としてショック、アナフィラキシー様症状(アレルギー反応)が報告されており、このような場合には適切な処置が必要となりますので、注射のあとはしばらく院内で安静にして様子をみさせていただきます。
入間市子宮頸がん予防ワクチン接種事業について
入間市にお住まいの小学6年生から、高校1年生のお嬢さんたちは、無料(公費負担)で子宮頸がん予防ワクチン(サーバリックス、ガーダシル、シルガード9)の接種が受けられます。
その際、生ワクチンの接種を受けている場合は27日以上、不活化ワクチンの接種を受けている場合は6日以上の間隔をあけてから子宮頸がん予防ワクチンを接種します。
接種には保護者の同伴が必要です…
公費負担でワクチン接種される方(小学校6年生~高校1年生)には保護者の同伴が必要です。
- 当日は健康保険証、母子健康手帳(紛失された場合は、記録票:健康福祉センターにあります)をご用意ください。
- 接種時には、ワクチン接種予診票を用いてお子さんの体調などについておたずねしてから、接種同意書に保護者のご署名をいただきます。
- 婦人科診察はいたしません。注射後は一定の時間、院内で安静にして経過をみたあとお帰りいただきます。
接種にあたってはつぎの点にもご注意ください…
- これらのワクチンは、すべての発がん性ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を防ぐものではありません。したがって、ワクチンを接種しても成人後は子宮がん検診を定期的に受けるようおすすめします。
- 注射部位の腫れ、痛み、しこり、発熱などの副反応(くわしくは3種類の子宮頸がん予防ワクチンの項を参照)が起ることがあります。
- 子宮頸がん予防ワクチン(サーバリックス/ガーダシル/シルガード9)接種後にほかのワクチンをうつ場合は、6日以上間隔をあけてください。